ネットニュースにて、俳優の駿河太郎さんの記事が飛び込んできました。
裁判の訴状を見ているわけでは無いのですが、接骨院も絡んでいることだし、記事にも書き方でおかしな所があるので、私なりに解説を入れてみます。
ちなみに、法曹資格者ではありませんので、法律に関しては一般論としており責任投稿とは出来ない点はご容赦下さいませ。
記事によるあらまし
①2018年4月、駿河が都内の自宅車庫に駐車するため軽自動車をバックさせたところ、走ってきたバイクと接触。バイクを運転していたのは50代の男性A。
②警察により事故は「過失運転致傷」として処理され、病院で打撲などで「14日程度の加療」と診断。
③Aは駿河さんが契約する保険会社と示談交渉をしてきた。保険会社は治療費などの一括対応としてAさんに約86万円を支払う用意があった。
④ところが、一連の対応に納得できなかったAは、駿河さん個人を訴え、事故後の治療費や後遺症の慰謝料など約530万円の損害賠償を請求した
⑤訴状によれば、Aさんは駿河がハザードランプで後退の合図や一時停止もしなかったため、Uターンをするものだと思い、バイクをそのまま走らせたところ、急にバックされ、ブレーキが間に合わなかったと主張。
一方の駿河は、Aさんは駿河の車の動きを確認していたのに、強引に路肩からすり抜けようとしたために事故が起きたと主張。
⑥さらにけがの程度についても両者の意見は異なり、Aは病院や接骨院などに3か月以上、約90回通院し、後遺障害等級13級の10に該当すると訴える。
⑦駿河側は打撲にかかる通院は「通常は1~2週間」で、後遺障害についても否定
⑧双方の意見があらゆる点で対立するため、裁判は長期化しついに2年2か月を経過した。
以上になりますが、この項目で「???」となるポイントもあるので、私なりに解説します。
②警察により事故は「過失運転致傷」として処理され、病院で打撲などで「14日程度の加療」と診断。
他の記事も合わせて読むと、この診断書に記載の14日間も何かしらのトリガーになっているようです。
多くの事故でもあるのですが、最初の診断書に記載された治療日数を超えての通院になった事で、被害者感情が高まることはあります。
しかし、最初の診断なんてこの先分からないので、あえて医師のルーティン的な対応もあって10日とか14日とかになっています。
その間に再度診察や継続治療が医師の元で行われれば、そこから警察提出用の診断書にある治療期間はアップデートされるので、問題は無いのです。
これは、勉強会でも大阪高裁判例を使って説明しています。
③Aは駿河さんが契約する保険会社と示談交渉をしてきた。保険会社は治療費などの一括対応としてAさんに約86万円を支払う用意があった。
民事上の責任は、保険会社と契約している事により、支払に関しては保険会社が対応します。
この事は、ある意味で「責任逃れ」みたいな感覚を加害者にも与えかねませんが、正確には支払責任の部分だけを担保するのであって、責任自体は当事者にあるのですね。
④ところが、一連の対応に納得できなかったAは、駿河さん個人を訴え、事故後の治療費や後遺症の慰謝料など約530万円の損害賠償を請求した
ちょっと表現に悪意があるなぁ・・・と、思います。
確かに裁判上は、責任ある駿河さんを訴える事になります。しかし対応するのは保険会社です。
これはイレギュラーでもなんでもありません。
ちなみに、交通事故は「後遺障害」であって「後遺症」ではありません。
医療従事者でも「後遺症認定」とか言っている人がいますが、意味合いが全然違ってきます。
「私は交通事故に詳しい!」と言っていても、知ったかぶり発見器の1つですので、注意しましょう(笑)
⑤訴状によれば、Aさんは駿河がハザードランプで後退の合図や一時停止もしなかったため、Uターンをするものだと思い、バイクをそのまま走らせたところ、急にバックされ、ブレーキが間に合わなかったと主張。
一方の駿河は、Aさんは駿河の車の動きを確認していたのに、強引に路肩からすり抜けようとしたために事故が起きたと主張。
これ・・・Aさんは過失割合0:100じゃないと納得しないのですかね?
まぁ無理ですね・・・私も少し開けた場所で後退時に、強引侵入してきた車両との接触で、東京簡易裁判所で物損訴訟したことありますが・・・
判例タイムズ見てもね・・・
逆に、駿河さん側の保険会社が「20:80」を提示してきたんでしょ?
結構な譲歩だと思うんですけどね・・・
「実況見分」もされているでしょうから、裁判官は実況見分調書で判断するでしょう。
⑥さらにけがの程度についても両者の意見は異なり、Aは病院や接骨院などに3か月以上、約90回通院し、後遺障害等級13級の10に該当すると訴える。
さぁて!私の超得意分野がやって参りました!!医療コーディネーターとしての経験も出しますね!!!
まず、ここで3ヶ月以上の通院とあります。
知りたいのは実際の通院期間。
事故は2018年4月、提訴が2018年12月・・・9ヶ月・・・微妙だな・・・
仮に3ヶ月以上が4ヶ月としましょう・・・以上を端数の日数の要因として考えると、治療の終了期間が7月末。
これならこの表現とします。
治療終了後の保険会社とのやりとり含め、後にもつれる交渉が8月に始まった・・・すぐには結果回答が出ませんので、早急にやってもつれてバリン!・・・となるのが、早くて9月末。
10月から弁護士を探して、それから訴状準備が始まり、医療資料も取り寄せて・・・12月になるね・・・最速レベルでやって。
これで確信できるのが・・・「後遺障害は認定されないよね」になります。
勉強会でも説明していますが、一般的に切断肢を除いての後遺障害認定される為の治療期間は、最低でも6ヶ月以上です。
これは、その期間が適切であることは、自賠責損害調査事務所の顧問医であるE先生のコメントを交えて、勉強会でも説明しています。
つまり、期間の問題があるので、後遺障害に認定されない。
仮に、6ヶ月の治療を行ったとした場合の症状固定日は、10月末。
そこから保険会社と交渉して、提訴?考えづらいよね
そもそも後遺障害等級を認定する期間である、自賠責損害調査事務所への提出は、早くて11月中。審査結果は1~2ヶ月かかるので、12月提訴には間に合わない。
ま「非該当」という審査結果は3週間ぐらいで出ることありますが・・・それでも非現実的。
そして13級10号。
この等級は
『足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み2の足指の用を廃したものまたは第三の足指以下の3の足指の用を廃したもの』
とあり、母指以外の用廃になります。
その場合、用廃ですので「うまく動かせない」というのは通用しません。
切断してないなら、ない状態でなぜ用廃に至ったか?の証拠を医学的に主張しなければなりません。
これ、勉強会でも言っていますね・・・民法709条に関連する「相当因果関係の立証責任」というもので、これはAさんに提示責任があります。
神経の損傷によるものなら、針筋電図検査等も必要であるし、当時に神経麻痺における外貌からも分かる映像も必要です。
「痛い」「うまく動かせない」ではありません。
「指としての用が全くもって無くなった」と言うことを医学的に主張しなくてはならないのです。
⑦駿河側は打撲にかかる通院は「通常は1~2週間」で、後遺障害についても否定
打撲の通院でも、医学的に症状があって加療が必要である証拠が必要です。
それが提出出来ないのであれば、一般的な外傷医学の論文をもちいって判断するしかありません。
なので、通常打撲の常識を出して1~2週間。
違うのであれば、「違う旨の医師による診断書」が必須になります。
当然ながら、医師が「後遺障害診断書」を作成しない限り、後遺障害が認定されることは自賠責損害調査事務所でも裁判所でもありません。
しかも裁判所は、自賠責損害調査事務所の審査をしっかりと優先させる傾向です。
審査が間違っているのなら、間違っている旨の主張も必要になります。
ですが、いろんな角度から見てもAさんには、主張を通せる要因が感じ得ません。
いくら優秀な弁護士雇っても、医学的な証拠が無い限りは、主張が通せません。
⑧双方の意見があらゆる点で対立するため、裁判は長期化しついに2年2か月を経過した。
・・・主張するのは自由ですので、出せば出すほど裁判所は聞かねばなりません。
あっちゃこっちゃ迷走すればするほど、時間はかかって当然です。
逆に私が14年前に行った裁判は、4ヶ月で終わっています。
これ見よがしに有無を言わせないような資料を用意し、相手側損保弁護士が崩そうにも時間だけが意味無くかかるような訴状を弁護士と共に作っています。
(この時から、医療コーディネートの足踏みをしていたのですね)
「これより医療照会を行いまして、今回の訴えに対する資料を提出し・・・」
という相手側損保弁護士の主張を裁判官は
「これだけ状況証拠が提出されていて、いつものようにダラダラと時間ばかりを消化した裁判の判決文を私に書かせるつもりですか?」
と、異例の和解誘導を行っています。
私にも譲歩部分はありましたが、完全に勝ちました。
準備が良かった・・・というか、医学的な証拠がガッツリでしたので。
これが曖昧だったり、主張ばっかで証拠の身が無い場合は、これぐらいはかかるでしょうね・・・
別に、異例な長期戦でも無いでしょう。
個人的感想としては、駿河さんへの同情しか無いですね。
ここで出てくるイヤぁ~な予感・・・まさかこじらせた要因に柔整師が・・・
かかっていないとも言い切れないのではないか?とも・・・
私が過去見てきた、交通事故知ったかぶり柔道整復師の「交通事故のことなら何でも相談してください」が、こういうことにも関与しかねないのです。
懸念要因を列挙します。
1・見えてこない医師の診察
どうも、医師診察が薄い印象。診断書がまともに作成されていれば、足指用廃には至らない事も分かるので、訴訟前に弁護士が無理!というのが普通。
接骨院に偏重施術を行っており、診断書が出ない・・・なので、後遺障害診断書が無いことから、保険会社に等級認めろ裁判にもなっている可能性が払拭出来ない。
2・3ヶ月以上とは言うが、3ヶ月程度の治療期間である可能性が高い
多くの柔道整復師は、交通事故の事を偏向して教わっているケースが多く、後遺障害を後遺症と平気で言っていたり、事故を知ったかぶっているケースが散見されています。
その中で、6ヶ月の加療が後遺障害等級審査には必須なのを知らず、保険会社からの治療費入金が拒否されることを恐れたり、計画的に治療費が確実に入ることにフォーカスした施策を行う事から、6ヶ月以内での治療終了に応じている柔整師も存在します。
事実、保険会社担当等との裏協定として、3ヶ月期間設定をスキームとして行っているレベルの人間もいました。
仮に・・・100歩譲って、Aさんに本当の症状があるにもかかわらず、治療期間を斬ってしまうことに荷担した・・・と言うことが払拭出来ないのです。
3・診断権の無い柔整師が「患者とられ」を懸念して医接連携をしていなかっただろうか?
駿河さん側の保険会社が「打撲は1~2週間」と抵抗している。
これは、その後において医師診察の下での診断アップデートがされていない可能性が高い。
接骨院が、Dr.に送っていない場合のケースの典型に似ています。
これでは本末転倒。
「患者が取られる」というなら、取られないDr.との連携をするのも柔整師の仕事のはず。
医師側にも、交通事故に関してはかなり曖昧かつ間違った知識が蔓延しています。
その不幸は、結局は最終的に患者が尻拭いします。
今後は、こういった事が減るような情報公開にシフトするつもりです。
4・弁護士も弁護士でよく引き受けたな・・・
状況は非常に不利。でも依頼に応じている・・・
これ仮説ですが・・・
接骨院にAさんが来る
→接骨院偏重施術が行われる
→Aさん、知ったかぶり柔整師から余計な情報を入れながら通院
→アップデート診断書が出てこないので、駿河さん側保険会社から打ち切り示唆
→ならば後遺症だぁ!として13級主張
→つっぱぬけられる
→接骨院も引くに引けないので、自分の所で「弁護士紹介します」制度から紹介
→弁護士も「こんなの無理だろ」と嫌がるが、提携みたいな感じでこれまでやってきてしまったので断れない
→暴走するAさんの主張をそのまま出すしかない
→裁判2年超えた←イマココ
あくまで私のフィクションです。
でもね・・・治療家業界の交通事故事情を10年見てきて・・・こういうのが想像として出て来ちゃうんですよね・・・経験から。
珍しいことか?っというと、そこまで珍しい訳じゃ無いけど、たまに聞くよね。
それが有名人だと、余計に目立つよね?
って事案だと思います。
どうしても、マスコミ記事って、偏重表現になっているので、私なりに解説してみました。
じゃあ、接骨院はどうしたらよかった?に関しては、勉強会を再開できたら、受講してくださいね!ってなります。
1つの記事から、ここまで読み込めるんですよね・・・事故を知っていると・・・
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