医療従事者向けの保険・交通事故・自賠責の知識をアップグレードする情報提供を行っています

  1. 勉強会&セミナー関係
  2. 202 view

院の感染対策の落としアナ:検証実験のお粗末さを斬ります

昨今は新型コロナの感染も、東京都の増加数を見たら、一時期のような数にはなっていないことから、絶望的な未来では無くなった感がしています。

そんな中、昨年の第1次緊急事態宣言の時の混乱ほどでは無いですが、経過した時間とともに接骨院業界の感染対策に、いくつかの淀みが垣間見れるようになって参りました。

昨今では、私も柔整あはき向けのオンラインセミナーを行っています。
これは私がセミナーにて収益事業を拡大したいという意図よりも、今後も含め感染対策に強い接骨院が出来れば、COVID-19の不幸の連鎖を少しでも減らせると思っているからです。

過去1ヶ月において、一番にここを痛ませたのは、COVID-19陽性の母親が感染を悲観して子どもにうつしてしまったかと自死を選ばれたことです。
私自身も、感染と重症化により家族を巻き込みましたから、本当に胸が痛い事件でした。

だから「コロナはただの風邪」という理論は、冷静に横に置いておいて・・・
なにかしらの感染源を接骨院・治療院から排除したい思いなのです。

そんな中、感染対策としていくつかの接骨院が導入している光触媒コーティングに関して、注意喚起ポイントがあったので今回はそれを題材にさせて頂きます。

<光触媒コーティングとは>

専門家ではないので、詳細は割愛指させて頂きますが、多くが「酸化チタン」を使用し、酸化チタン(TiO2)が光を受けることで、付着したウイルスなどの有害物質のみを触媒して、無害な水や二酸化炭素などに分解するそうです。

先に申しあげますが、このコーティングをする事が良くない・・・が今回の趣旨ではありません。

<このコーティングで出来る事>

前回のおさらいになりますが、感染対策にはいくつかあり「これさえしていれば」という感染対策は存在しません

なぜなら、感染方法そのものが複数ある事、さらに菌とウイルスでも違うし、ウイルスでもエンベローブの有る無しで、エタノールが消毒に効果ある無しがあります。

まず「垂直感染」と「水平感染」があり、施術所開業要件は「水平感染」に関係し、さらに大きく分けて
「接触感染」
「空気感染」
「媒介物感染」
とご説明しました。

さて、このコーティングで出来る事を確認しますと「接触感染対策」になります。
なので
・接触対策として「接触感染対策をしました!アピール」
・通常業務で拭き残した箇所への、保全的衛生対策

と言うことでは有意だと思います。

逆に言うと
・飛沫感染としての対策にはならない
・コーティングしても、消毒作業をしなくてもいいという理由にはならない
ことを踏まえて導入する必要があります。

先日、実際に接骨院スタッフが2人陽性者を出してしまった接骨院でも、コチラのようなコーティングを施工していたそうです。
しかし、対応方法を私と話しながら、そのコーティングに関しては
「患者さんへのアピールにはなりますが、感染対策としては・・・イヤと言うほど思い知らされました」
としみじみと仰ってました。

くり返しますが、私は無条件に否定をしているのでは無いです。
これだけすれば感染対策になると言う訳じゃ無いし、特にCOVID-19に対しては限定的だから、そこを知っておくべきですよ・・・と、申し上げたいのです。

なぜ申し上げるか?

次にあげる「半分ダマシ」と疑われるような主張が看過出来ないからです。

<ある写真で見た、アピール文章から・・・>

コーティングでは効果を謳うことが説明されています。
実際に、酸化チタンはそういった効果があるのも存じ上げています。
だから、私が知りうる限りは真実なので、そこは否定しません。

しかし、ある文が「へっ?!」と気になるキッカケになりました。

『本当に大丈夫?アルコール除菌の真実。除菌直後はキレイでも、乾いた後は元通り』

つまり、このご時世に「アルコール除菌だけじゃダメよ」という啓蒙的な商品アピールだとは思いますが、なんともツッコミ処満載なコピーを見つけます。
同時に、この商品を扱っている代理店が作成している説明動画も発見。

要約すると
・アルコールだけで除菌出来ない場合もある
・ルミテスターでチェックすると、それが数値化されて証拠が出る
・「エタノール」「次亜塩素酸」「光触媒コーティング」の3つの比較実験動画でもそれが証明出来る
などなどですが・・・

あまりにもツッコミポイント多いもんで、今回の記事書くのが・・・膨大になりかねない(笑
でも、出来る限り解説します。

先に出していきます。
私は、嫌いなモノがハッキリしています。

それは、人を騙して自身の利益を積み上げる事です。
「知らない」では、その先に人の命が関わるのであれば、見逃せなくなります。
ましてや、その間に、同業者がいれば「ふざけんなよ!」となります。

なので、同業とその先の患者さんを守る為に、ぶった斬ります!!

ただし、自分が調べられる範囲だけですので、ご容赦下さい

<アピール文言内でのツッコミポイント>

①菌とウイルスは違うので「消毒」の方が表現としては正しい
→読んで字の如しです。

②100歩譲って除菌がウイルスも含むとしよう。・・・そもそもアルコール消毒が有効なのは、細胞膜やエンベローブを持つモノだけ
→菌とウイルスでは、アルコールに耐性のあるものもあります。
菌:枯草菌・セレウス菌・炭疽菌など
ウイルス:ノロ・ロタ・A型肝炎・ポリオ・コクサッキー・エコー などのウイルス

ウイルスでならエンベローブを持つなら効果あり。
細菌の多くは多細胞では無いので、アルコールで細胞壁ぶっ壊してしまえばいい。

なので、これが該当しない汚れであれば、アルコールはそもそも効果が無い

③ルミテスターを開発したキッコーマンはウイルス検出に有効なんて出していない
→そもそもこの機会は衛生管理ではありますが、測定方法が「ATPとその産生物質の検出」をターゲットにしています。
これは細胞活動に必要なATP(アデノシン三リン酸)を検出しているのです。
ウイルスは生物ではないので、当然ながら検出できません。

ルミテスターHPより

検出できないのであれば、それでの判断は出来ません。

逆に当然ながら、アルコールをかけてもATPが残っていれば、ルミテスターは反応します。

※アデノシン三リン酸製剤にも、酸化チタンが添加物として入っているんですよね・・・条件が違うんだろうけど、ここまでしか分からないです・・・

さて、そこからさらに拝見して私がひっくり返った「コーティング業者の代理店が作った動画」があるのですが、それをオブザーバーの感染管理看護師の方に拝見して貰って、問題点を定義します。

<検証動画へのツッコミポイント>

①実験を行う手が素手
→当然ながら、この様な衛生・感染に関する検証を行う場合は、素手ではいけません。
マニキュアされた爪も長く、その中にしっかり汚染物質の可能性もあります。

②アルコール・次亜塩素酸とあるが濃度が不明
→アルコールは何%なんでしょう?そして「次亜塩素」は「次亜塩素酸水」なのか「次亜塩素酸ナトリウム」なのか?濃度は?も疑問なんです。
というのも、素手で行っている中で、この次に出す「吹きかけて、キッチンタオルで拭く」という行為があるのですが、これって次亜塩素酸ナトリウムで濃度によってはめっちゃ指が荒れます。
次亜塩素酸水で病院が院内感染対策で使う様なホンモノであれば別ですが、毒性高いし素手で使えません。
パッケージングされた次亜塩素酸水は問題外です。

③塗付と吹き上げの作業に疑問
→テーブルの上に、検証用のゾーニングをします。
その後、「アルコール」「次亜塩素酸」「コーティング剤」をスプレーします。
スプレー後にキッチンタオルを上から掛けて、その場を手で押します。
その後をテスターで計るのですが・・・

素手でやっている時点で、そこから汚染拡大します。
そして、基本的には「拭き上げる」「揮発により乾燥させる」が、感染学的に物凄く重要でありながら、それはされていません。

アルコール噴霧だけではいけなくて、「逆に固着させてしまいかねない」というのが常識だそうです。
しかも、揮発するときにエンベローブ破壊を行うので、乾燥させるまで待たなくてはならないのです。
でも、明らかに濡れているところにテスター芯をヌリヌリ・・・って、もともとATPを測定しているんだった・・・(爆)

④他は市販スプレーだが、コーティング剤のみ「噴霧器」を使用
→実験は同じ条件でやらなくてはなりません。看護師さんも「なんで?(笑)」と突っ込んでました

⑤編集が多いと誤解を招く
→YouTubeの検証動画を行う場合って、多くは電波時計を一緒に撮影します。
ヤラセでは無い事を証明する為ですが・・・ここには無くて、編集が多いんですよね・・・

⑥コメント欄が閉ざされている
→看護師「これ、コメント欄がオフになっていますよね・・・オフじゃなかったら、感染症学を分かっている人間からのコメントで大炎上ですよ・・・」
だと思います。

<なので>

衛生学を学び、国家試験を合格して免許を所持している柔整あはきが、無防備に「アルコールで除菌出来ない」に賛同するのはどうかなぁ~・・・って、思います。

私は、医療コーディネートの仕事をしていると、ありとあらゆる分野の方から同業の悪口を聞きます。
いろんなポイントがありますが、「医療でもないのに」と言うのが堪えますね。
類似は入るだろうけど、医療界を少しは入っているとは思うので。

医科が同様のコーティングをする事もあるでしょう。
でも「アルコールで除菌出来ない・・・」のところに賛同する・・・ということは無いと思います。
それは病院でもクリニックでも同様です。
※私が入院した日赤医療センターでは、入れ替わりコロナ患者が入院してきますが、この様なコーティングは行っていません。感染学に準えての処理をして対応されてます。

厚労省管轄であるならば、そういったところに惑わさず、同様レベルでの衛生・感染対策は必須だと思います。

確かに気持ちがいいんですよ。
「実は知らなかったでしょう?」と人に言うのは。
だけど同様に
「ルミテスターってウイルスは測定できないんですよ」
とは違うんです。前者はデマ、後者は真実ですから。

あとで分かったときに「あの人は適当な人なんだ」と思われないように、基準をどこかで持って欲しい・・・これがオンラインセミナーを行っている理由です。

あえてもう一度書きますけど・・・コーティングをする事は否定しません。
する事で安心する患者さんもいるでしょう。
だたし
・接触感染であって飛沫感染対策は別に行って下さい
・根拠の無い情報拡散はするべきではありません

この2つだけ、どうぞよろしくお願いします。

さらに知識を高めたい方は、オンラインセミナーへどうぞ。

柔整あはきのための「COVID-19対応・対策セミナー」

日時:2021年2月11日(祝・木) 21:00~23:00
使用オンラインツール:Google Meet(ほぼZOOMと同じになります)
定員:各回20名ほど
受講費:5,500円(税込) 事前払い込み制
支払方法:銀行振込・PayPay・paypalのいずれか

<申込参加方法>

①弊社HPにある「問い合わせ」から下記を入力して申し込みください
・お名前
・メールアドレス
・件名→セミナーの件
・お問い合わせ内容→希望日と支払方法をご教示下さい
開催日:2020年2月11日
支払方法:銀行振込  PayPay  paypal のいずれか

②弊社より受付返信メールを送信します。その際に振り込み案内のPDFを添付します。
③振込確認後、当日開催1時間前までに、Googlemeetの参加コードを送信します
※振込確認の為に当日15時までを締切とさせて頂きます

<ご案内>

・メールは自動送信ではありませんので、返信までのタイムラグはご容赦下さい
・振込の場合、確認可能時間が金融機関によって変わりますのでお注意下さい
・基本的にメールでの対応になりますので、@primecare.co.jpからのドメインが受信できるようにお願いします

<ご注意>

○録音・録画は出来ません

○あくまで杉本の体験報告と、そこから調べる事が出来る範囲の情報になります

○新規のCOVID-19情報が入った場合は、各々の責任においてアップデートなさって下さい

○提供情報においては、杉本の考えを述べておりますが、あくまで「参考」として捉えて頂ければ幸いです

○提供情報においては、医師からの情報の監修もされておりますが 今後のWHO・厚生労働省を始めとする各機関からの発表により、エビデンスも含め 対応が変更になる場合があります

○提供する情報による、COVID-19関係の結果においては、一切の責任を負いません

勉強会&セミナー関係の最近記事

  1. 院の感染対策の落としアナ:検証実験のお粗末さを斬ります

  2. 今、コロナ対策で治療院業界に求められると思う「ベストエフォート」という考え方を検証してみる…

  3. COVID-19オンラインセミナーで伝えたいこと:第1回開催終了しました

  4. COVID-19オンラインセミナーで伝えたいこと:保健所対応編

  5. COVID-19オンラインセミナーで伝えたいこと:清掃編

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP